塩焼瓦とは日本独自の瓦の一種で、粘土瓦の焼成過程で塩を加えて独特の赤褐色に仕上げる瓦のことです。赤瓦とも呼ばれる塩焼瓦は、現在はほぼ生産されていません。今回の記事では、塩焼瓦の特徴や、現在生産されていない理由、修理やリフォームに際しての代替方法などについて紹介します。
塩焼瓦とは
塩焼瓦は、粘土瓦の中の一種「無釉薬瓦」をさらに細分化したうちの一種です。焼成過程で塩を加えて独特の赤褐色に仕上げることで知られています。通常の瓦と比べ塩焼瓦は赤みが強く、耐候性にも優れているため特に沿岸地域や寒冷地で人気が高いです。塩焼瓦は「赤瓦」とも呼ばれ、日本の伝統的な建築に広く使用されてきましたが、現代では公害問題によりその生産が減少しているため、貴重な存在となっています。
塩焼瓦の製造方法
塩焼瓦の製造過程では、焼成加熱の終了前後に焚き口から一定の間隔で2~4回ほど塩を投入する工程が含まれます。これにより、熱で分解された塩(酸化ナトリウム)が瓦の素地の珪酸と化合し、釉薬のような被膜が生成されます。この釉薬により、塩焼瓦特有の赤褐色が生まれます。
塩焼瓦の特徴
独特の発色
塩焼瓦が持つ赤褐色は、焼成過程で塩が分解されて生成される被膜によるものです。この被膜が瓦の表面をコーティングし、発色とともに美しい光沢を生み出します。伝統的な建物に使用されると、周囲の自然環境と調和し、景観にも優れた効果をもたらします。
耐久性の向上
瓦の表面に生成された被膜は、風雨や紫外線から瓦を保護するため、塩焼瓦は経年劣化が少なく、長い年月を経てもその美しさを保ちやすいとされています。これは、日差しが強く湿度の高い日本の気候に非常に適した性質です。
塩焼瓦の優れた特性
塩焼瓦はその製造過程で得られる被膜のおかげで、特に耐候性に優れています。
塩害への強さ
沿岸地域では塩害が問題となることが多く、海風によって塩分が建物に付着し、劣化が進行しやすくなります。しかし、塩焼瓦はその名の通り、塩分を含む被膜を持っているため、塩害に強いとされています。沿岸部に多くの塩焼瓦の屋根が見られるのも、この特性によるものです。
凍害への耐性
冷涼な地域では冬季に瓦が凍結と解凍を繰り返すことで劣化が進む凍害が発生しやすくなります。塩焼瓦は水分が少ないため、凍害に強い性質を持ち、寒冷地での使用にも適しています。このため、雪が多く寒さが厳しい地域でも塩焼瓦は重宝されています。
経年による色褪せが少ない
塩焼瓦は通常の粘土瓦に比べて色褪せが少なく、美しい赤褐色が長く保たれます。これは、日光や雨風にさらされても瓦の色が劣化しにくい特性があるためで、長期的な美観維持が求められる建物に非常に適しています。
塩焼瓦が使用されている地域と実例
沿岸部での使用例
海沿いの地域では、建物が常に潮風にさらされており、外壁や屋根の劣化が早いのが課題です。塩焼瓦はその耐塩性により、こうした地域の住宅や寺社に広く使われてきました。赤褐色の塩焼瓦が並ぶ沿岸地域の集落は、地域特有の風情を醸し出し、観光地としても注目されています。
寒冷地での使用例
雪が多い地域や寒冷地では、冬季の凍結と解凍により建材が劣化しやすく、凍害に強い塩焼瓦が使用されています。寒冷地の民家や神社仏閣に見られる塩焼瓦の屋根は、雪の重みや凍結にも耐えることができ、長寿命を誇ります。
塩焼瓦の現状と代替品
公害問題と生産停止の背景
かつては日本各地で生産されていた塩焼瓦ですが、公害問題によりその生産は減少しました。焼成時に塩を加えることで発生する排ガスが大気汚染の原因となったためです。排ガスには有害物質が含まれており、環境保護の観点から規制が強化された結果、現在ではほとんど生産されなくなりました。
そのため、現在では塩焼瓦を新たに入手することが難しく、現存する塩焼瓦は貴重な建材となっています。
補修時の代替品としての釉薬瓦
既存の塩焼瓦屋根を補修する際には、釉薬瓦(陶器瓦)が代替品として用いられることが一般的です。釉薬瓦は塩焼瓦と色合いが近いものを用意しやすく、部分的な修復にも適しています。また一部のみ代替しても外観に大きな違和感を与えません。
まとめ
塩焼瓦は、かつての日本の建築において欠かせない素材であり、その高い耐久性と美しい外観は今もなお人々に親しまれています。日本の瓦文化を支えてきた塩焼瓦の歴史と特徴は、後世に伝えられるべき貴重な財産です。現代の住宅で使用するのは難しいものの、代替品である釉薬瓦を使った屋根の補修により、伝統的なデザインと機能性を引き継いでいくことが期待されます。
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