はじめに
トタン屋根は、戦後の高度経済成長期から多くの住宅や工場、倉庫などに採用され、その軽量さとコストパフォーマンスの良さで広く親しまれてきました。しかし、単に「安価な金属屋根」というだけでなく、屋根全体の構造や各部材の名称、さらには施工方法に独自の特徴があります。
本記事では、トタン屋根の定義から始まり、従来の工法と現代のリフォーム市場における位置づけ、そして各構造部材の名称と役割について詳しく解説します。これにより、リフォームやメンテナンスを検討される住宅所有者やDIY愛好者、さらには専門家の方にも役立つ情報を提供します。
トタン屋根とは?
トタン屋根とは、亜鉛メッキ鋼板を使用した金属屋根の一種です。亜鉛メッキにより鉄を保護し、錆の発生を抑えると同時に、軽量で施工が容易なため、戦後の住宅建築に多く採用されました。近年では、耐久性や防錆性をさらに向上させたガルバリウム鋼板なども登場していますが、伝統的なトタン屋根はその歴史的背景と共に根強い人気を誇っています。
また、トタン屋根は「縦葺き」の工法が基本となっており、屋根材を縦に配置することで勾配が緩い屋根にも対応できる点が大きな特徴です。従来のトタン屋根は、亜鉛メッキのみによる防錆対策であったため、定期的な塗装やメンテナンスが欠かせません。
トタン屋根の施工方法と構造
トタン屋根の施工方法には、主に以下の2種類があります。
瓦棒葺きと三晃式の違い
瓦棒葺き屋根(芯木あり)
瓦棒葺きとは、屋根材の側面に凸状の突起「瓦棒」を設け、その内部に芯木またはタルキと呼ばれる木材を組み込む工法です。芯木があることで、屋根の剛性が向上し、耐久性も高まりますが、木材部分が腐食すると雨漏りの原因になるため、定期的な点検が重要です。
三晃式トタン屋根(芯木なし)
一方、三晃式トタン屋根は芯木が使用されておらず、空洞構造となっています。これにより、木材の腐食リスクが低く、雨漏りしにくい構造が実現されています。また、勾配が緩い屋根でも施工可能な点が魅力です。ただし、施工できる業者は限られるため、信頼できる専門業者の選定が必要です。
立平葺きの最新工法
近年では、よりシンプルな外観と施工性を求めた「立平葺き」と呼ばれる工法も登場しています。これは、伝統的な瓦棒葺きと比べ、接合部分を少なくすることで雨漏りリスクを低減し、施工時間を短縮できる工法です。立平葺きは、最新の金属屋根リフォームにおいて注目されています。
主な構造部材と名称の詳細
トタン屋根は、複数の部材から構成されており、それぞれに名称と役割があります。ここでは、主要な部材について解説します。
芯木(タルキ)
瓦棒葺き屋根において、トタン板内部に埋め込まれる木材部分を「芯木」または「タルキ」と呼びます。芯木は屋根の剛性を確保し、全体の耐久性に寄与しますが、木材であるため経年劣化や腐食が進むと、雨漏りなどのトラブルの原因となります。
棟(むね)
棟は、屋根の最上部に位置する水平な部分で、複数の屋根面が交差する部分です。棟は屋根全体の排水や耐風性に大きく影響するため、定期的な点検とメンテナンスが必要です。また、リフォームの際に最も注意が必要な部分でもあります。
軒先・鼻隠し
屋根の端部、つまり軒先は、雨水の排出や外観のアクセントとして重要です。軒先の下に取り付けられる板材を「鼻隠し」と呼び、これにより見た目が整えられるとともに、雨樋の下地としての機能も果たします。鼻隠しには、耐久性の高いガルバリウム製品が採用されることが多いです。
下葺き材/ルーフィング
下葺き材は、屋根の防水シートとして使用される部材です。トタン屋根では、下葺き材の劣化が雨漏りの原因となるため、耐用年数が長い製品を選ぶことが重要です。現在は、樹脂シートを芯材にした高耐久ルーフィングが主流となっています。
野地板と垂木
野地板は、屋根材を固定するための下地として、垂木の上に張られる板です。昔は杉材などの板が使用されていましたが、現在は耐震性や耐久性を考慮して、12㎜厚の構造用合板が一般的です。垂木は野地板を支える木製の骨組みで、母屋とともに屋根の構造を形成します。
トタン屋根のリフォームとメンテナンス
トタン屋根は、軽量で施工がしやすい一方、亜鉛メッキの防錆対策が不十分だと錆が進行しやすく、経年劣化に伴い雨漏りや断熱性能の低下が懸念されます。そのため、定期的なメンテナンスが必須です。
定期点検と塗装
錆の発生や塗装の剥がれを防ぐため、10~15年ごとに屋根塗装によるメンテナンスを実施することが推奨されます。ケレン作業や高圧洗浄で表面の汚れを除去した後、防錆効果のある塗料で塗装することで、トタン屋根の耐用年数を延ばすことができます。
リフォームの選択肢
リフォームの方法としては、屋根全体の葺き替え(張り替え)工法と、既存の屋根の上に新たな屋根材を重ねる重ね張り(カバー工法)があります。特に、トタン屋根の場合、経年劣化が進んでいる場合は、下地の野地板や芯木の状態をしっかり確認し、必要に応じて全面張り替えを検討する必要があります。一方、軽微な劣化であれば重ね張り工法により、コストを抑えつつリフォームが可能です。
まとめ
トタン屋根は、その軽量さと施工の容易さ、低コストというメリットから長年にわたり広く採用されてきました。一方、亜鉛メッキ層の劣化や芯木の腐食、断熱性・遮音性の低さといった課題も抱えています。これらの課題は、定期的なメンテナンスや適切なリフォーム工法の採用により、十分に対処することが可能です。
今後、耐久性や防錆性をさらに向上させた新素材の普及とともに、伝統的なトタン屋根の構造や名称の知識は、古い建物の修繕やリフォームにおいても重要な指標となります。住宅リフォームを検討する際は、各部材の名称と役割、施工方法を正しく理解し、信頼できる専門業者に相談することで、安心で長持ちする屋根を実現しましょう。
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